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立トスてレテス・備忘録

1 :◆p132.rs1IQ:2019/02/22(金) 07:57:46.66 ID:YBvEGoQOF
◆p132.rs1IQ専用スレです..φ(_ _)m

82 :◆p132.rs1IQ:2019/03/18(月) 11:32:39.24 ID:1SKIszRCB
 一八九五年一月八日、わたしは朝鮮の歴史に広く影響を及ぼしかねない、異例の式典を目
撃した。朝鮮に独立というプレゼントを贈った日本は、清への従属関係を正式かつ公に破棄
せよと朝鮮国王に迫っていた。官僚腐敗という積年の弊害を一掃した彼らは国王に対し、
《土地の神の祭壇》[社稷壇(しやしよくだん)]前においてその破棄宣言を準正式に執り行って朝鮮の独立を宣
言し、さらに提案された国政改革を行うと宗廟前において誓えと要求したのである。小事を
誇張して考える傾向のある国王は自分にとってきわめて嫌悪を感じさせるこの誓告をしばら
く延期しており、式典の前夜ですら、代々守ってきた道をはずすことはならぬと祖先の霊か
ら厳命される夢を見て、式典執行におびえていた。

83 :◆p132.rs1IQ:2019/03/18(月) 11:34:59.14 ID:8uOk1DVIH
 しかし井上伯爵の気迫は祖先の霊を凌駕し、北漢山(プツカンサン)のふもとの鬱蒼(うつそう)とした松林にある、朝
鮮で最も聖なる祭壇において、王族と政府高官列席のもとに誓告式は執り行われた。事態を
由々しく受けとめた老年の人々はその前々日から食を断って嘆いた。また《桑の宮殿》の敷
地にある丘からこの印象的な光景を眺めていた白服の群衆のあいだには、笑みもなければ発
されることばもなかった。空には暗雲がたれこめ、厳しい東風が吹き――朝鮮式の考えでは
不吉なしるしだった。

84 :◆p132.rs1IQ:2019/03/18(月) 11:37:08.03 ID:pypSWWBJ6
 国王の行列はコドゥンの様相をいくらかは見せながらも、コドゥンを東洋世界で最も堂々
としたものにしているあの野蛮な壮麗さには欠けていた。実のところ野蛮ではあっても壮麗
ではなく、新しい時代とすぐそこまで押し寄せつつある西洋文明の波をうかがわせるものが
あった。宮廷内や行列のなかにきりりとした青い防寒コート姿の日本人警官が数人混じり、
内務大臣朴泳孝(パクヨンヒヨ)の警護にあたっているのがそれである。朴泳孝は一八八四年にクーデター
[甲申政変]を企てて失敗に終わった急進派のひとりで、報復の誓いの対象となった人物だ
った。にもかかわらず国王は彼を許し、降格されていたその祖先を復権させ、彼を亡命中の
外国から呼びもどして高官の地位を授けざるをえなかったのである。

85 :◆p132.rs1IQ:2019/03/18(月) 11:39:06.87 ID:pypSWWBJ6
 王宮の外の長い道路には朝鮮の騎兵隊が整列し、顔を塀に、背中と馬のしっぽを国王に向
けていた。大量の朝鮮人兵士が銘柄のばらばらなマスケット銃をたずさえ、ズボンの丈もま
ちまちな黒と茶色と青の綿の制服を着て、白い綿入れの靴下にわらじ、ピンクのリボンを巻
いたチロリアン風の黒いフェルト帽という姿でごちゃごちゃと立っており、創設されたソウ
ルの警官が青い西洋式の制服姿でそれに混じっている。宮廷官吏の過食ぎみで立派な朝鮮馬
が一フィートも高さのある鞍(くら)と華麗で野蛮な装飾をつけ、頭には赤いポンポンを飾って赤い
たてがみを揺らしながら勢ぞろいしている。一般大衆はことばも動きもなくたたずんでい
た。

86 :◆p132.rs1IQ:2019/03/18(月) 11:41:11.30 ID:/7cD9WTNZ
 予定よりずっと遅れ、国王は外国からの圧力に最後の抵抗を示すつもりだろうかという憶
測がわたしの頭に何度も浮かんだあと、行列が王宮の門からあらわれた。棒の先が三叉にな
った巨大な旗、高々と掲げられる紫色の包み、うやうやしく運ばれる石の台(3)。緋色と青の衣
を着て、衣と同色の道化師帽の形をした帽子をかぶった人々、黄色の服と黄色の竹帽子姿の
内廷官、そして小旗を持った従者たち。ついで紅絹の傘があらわれ、そのあとには四〇人で
かつぐ華麗な輿(こし)ではなく、両側にガラスのはまった簡素な木の輿がつづいた。その輿には青
白く気落ちした表情の国王が乗り、かつぎ手は四人しかいなかった。皇太子が同じような輿
に乗ってそのあとにつづいた。高官、大臣、将校が従者の手を借りて飾りをつけた馬にまた
がり、それぞれふたりの従者に鐙(あぶみ)を支えられ、さらにふたりの従者に馬を引かれて内務大臣
のうしろに整列した。内務大臣は黒いロバに乗り、外国製の鞍と外国人の護衛をつけている
のでよく目立つ。行列が聖なる場所に到着すると、軍の衛兵と騎兵の大半は塀の外側に残
り、国王と高官、そしておもな従者のみが祭壇の前へと進んだ。緋色の衣をまとった人々が

87 :◆p132.rs1IQ:2019/03/18(月) 11:43:02.48 ID:OzNZWQ9f/
暗緑色の松の木陰に集まっているさまは趣という観点からはとても感動的で、政治的な見地
からは朝鮮国王がつぎのような宣誓を行ったことは、このたびの戦争という冗長なドラマに
おける最も意義深い場面であった。

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