立トスてレテス・備忘録

1 ：◆p132.rs1IQ：2019/02/22(金) 07:57:46.66 ID:YBvEGoQOF

◆p132.rs1IQ専用スレです..φ(_ _)m

260 ：◆p132.rs1IQ：2019/05/29(水) 11:31:27.16 ID:cotVWag04

朝鮮紀行　英国婦人の見た李朝末期
イザベラ・バード
時岡敬子[訳]
p327
　現在朝鮮の改革は日本の保護下では行われていないとはいえ、進行中のものはほとんどど
の段階においても日本が定めた方針に則っていることを念頭に置かなければならない。
　日日新聞は井上伯が朝鮮に関し「王室と国しかわたしの眼中にはなかった」と述べたと報
じている。一八九五年当初においてはこのような結論が正当だったのであり、おなじ結論に
達したわたしは井上伯のように申し分のない権威に擁護されていることをうれしく思う。
　したがって、王妃から内々に会いたいと招待を受けたときはただただ楽しみで、王妃の侍
医であり懇意な友人でもあるアメリカ人医療宣教師アンダーウッド夫人につきそわれて宮中
にうかがった。ヒリアー氏がわたしをかつぎ手八人の官用輿に乗せ、公使館衛兵をつけて
景福宮(ｷﾖﾝﾎﾞﾂｸﾝ)まで送り届けてくれた。都合六度この宮殿にうかがったが、訪ねるたびその内部の
精緻さへの驚嘆と、典雅さ、美しさへの賞賛は増すばかりだった。

261 ：◆p132.rs1IQ：2019/05/29(水) 11:33:18.55 ID:x+cvJ3jZ1

　アーチを三つ連ねた荘重な門の前には石の欄干のついた石段があり、石の獅子(しし)が石の台座
にすわっている。門を入ってなかへ進むと、石畳を敷いた中庭や大きな謁見(えつけん)用の殿舎、あず
まや、さまざまな装飾をほどこした多様な建物、石橋、渡り廊下、彫刻の入った屋根を二層
重ねた門など、その数の多さにとまどわされる。大門には日本人の警官が立っている。内門
は多く、そのひとつごとに六人の朝鮮人衛兵がぶらぶらしていて、わたしたちが近づくと持
ち場につき、捧(ささ)げ銃(つつ)の姿勢をとったものである！　八〇〇人の衛兵のほかにさまざまな種類
の従者や官吏、廷臣や大臣とその従者、書士、伝令、取り巻きが一五〇〇人いるのであるか
ら、広大な王宮の敷地内もソウル市街と同じ込み具合のようである。半マイル近くいろいろ
な建物を通りすぎたあと、わたしたちは中央に装飾的な亭(ちん)のあるとてもきれいな人工池に来
た。池のそばには建ってまもない洋館と、当時王と王妃の住まいであった簡素な朝鮮家屋が

262 ：◆p132.rs1IQ：2019/05/29(水) 11:36:28.06 ID:ZXIgwR73i

幾棟かあった。王妃の住まいに通じる中庭の門に着くと、わたしたちは宮廷通訳官、何人も
の宦官、女官ふたり、王妃の乳母に迎えられた。王妃の乳母は宮廷に仕える女性たちの長
で、きわめて特権を持つ存在であり、繊細な顔だちの中年女性だった。
　黄色い絹で飾った簡素な部屋でわたしたちはまずコーヒーとケーキで丁重にもてなされ
た。あとで食事をふるまわれた際には、乳母が宮廷通訳官に「介添えされ」てとても美しく
しつらえられたテーブルの上座についた。食事は「西洋式」でじつにみごとにととのえら
れ、スープ、魚、ウズラ、マガモ、キジ、詰め物をした牛肉のロール、野菜、クリーム菓
子、クルミのグラッセ、くだもの、ボルドー産赤ワイン、そしてコーヒーという内容だっ
た。宮中に仕える女性が何人かとその他の人々がわたしたちと同席した。ゆっくり食事をと
ったあと、わたしたちは通訳だけをともなって小さな謁見の間に通された。謁見の間の片側
には高座があり、そこには深紅のビロード張りの椅子三脚をうしろに国王、皇太子、王妃が
立っていた。アンダーウッド夫人がわたしを紹介すると、三人は椅子に腰を下ろし、わたし
たちにも用意された椅子にすわるよう勧めた。