立トスてレテス・備忘録

1 ：◆p132.rs1IQ：2019/02/22(金) 07:57:46.66 ID:YBvEGoQOF

◆p132.rs1IQ専用スレです..φ(_ _)m

253 ：◆p132.rs1IQ：2019/05/22(水) 08:37:43.45 ID:7G3bwJdMQ

朝鮮紀行　英国婦人の見た李朝末期
イザベラ・バード
時岡敬子[訳]
p151
　結婚前の朝鮮人はなにものでもない。「青二才」として一顧だにされない。結婚式の日は
敬意を払われる存在、成人としての門出の日であり、この日を境に社会的地位がぐんとアッ
プする。若者は長くゆたかな髪を二本のおさげに編んでうしろにたらし、帯で締める短い上
衣を着ている。体は一人前でも居場所がどこにもないように見えるし、外国人からはいつも
女の子とまちがえられる。それが結婚に不可欠な儀式、新郎新婦両家のあいだの正式なあい
さつでがらりと変わるのである。若者は頭のてっぺんを剃り、残った髪を晴れて「まげ」に
結う。網巾(ﾏﾝｺﾞﾝ)という底のない縁なし帽のような馬毛のヘアバンドをつけ、以後この網巾なしの

254 ：◆p132.rs1IQ：2019/05/22(水) 08:39:24.33 ID:Lf/RvUsT3

姿を人目にさらすことは決してない。それから黒い帽子をかぶり、丈のたっぷりした長い上
衣を着て、これまでのさまにならない足運びも威厳ある歩き方に変貌する。きょうを境に幼
なじみたちは目下となる。今後彼の名前には「ミスター」に相当する尊称がつき、彼とこと
ばをかわすときには必ず敬語が用いられる。つまり、彼は「名なしのごんべえ」から「ひと
かどの人物」になるのである。
　一方女の子は、結婚で「明白な運命」が現実化される。婚期を逸した朝鮮の未婚女性は、
神聖な評判など皆無の尼寺に追いやられてしまう。七歳のときから父親の家の内庭で外界と
はいっさい接触なしに育った少女は、一七歳ごろ義父の家の奥に移され、完全に蟄居(ちつきよ)する。
実家とのきずなは断たれ、今後は夫の家が彼女の牢獄となる。それが「しきたり」なのであ
る。しきたりで痛々しい虐待をするなんてと思うのは、わたしたちがそう考えるにすぎな
い。新郎新婦が自分で相手を選んだわけではないのは言うまでもない。結婚は父親どうしで

255 ：◆p132.rs1IQ：2019/05/22(水) 08:41:01.34 ID:pMPVCtX+/

決め、それが当然のこととして了承される。息子が二一歳にもなってまだ独身でいれば、父
親は怠慢だという評判がたつ。一般に一七、八歳が男子の結婚年齢である。女の子は両親が
「良縁」をのがしてしまいそうだと考えた場合、まだほんの子供の年齢で結婚式を挙げるこ
とがあるものの、一六歳になるまでは妻としての務めを果たさなくてよい。一方、両親がな
にかの事情で早く息子に妻をめとらせて望ましい姻戚関係を得たいと考えた場合、一〇歳や
一二歳の男の子が結婚することはざらにあり、黄色の帽子にピンクとブルーの上衣を着てお
となぶろうとしている男の子の姿が都会の光景のなかに見られる。